「不適切保育」が「虐待等と疑われる事案」との名称変更されることへの違和感

皆さんこんにちは。今回の話は何かと言いますと、「「不適切保育」というワードが「虐待等と疑われる事案」との名称変更されることへの違和感」について話をしたいと思います。

ちょっとディープなタイトルですね。。苦笑

はい、だいぶ切り込んだ話をしていきたいと思います。

このコラムは2023年5月にこども家庭庁から出された、「保育所等における虐待等の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」に対して、個人的な見解を述べるものです。

詳しくはガイドラインを一読ください。

違和感の発露

数年前のいわゆる虐待とも考えられる保育への報道により、「不適切保育」という言葉が広まりました。

これまで保育現場では「不適切保育」という単語を使ったことありませんでしたし、教員の立場からも学生に教えることもありませんでした。

そんな新参者のワードが、瞬く間に広がっていき、保育関係者は「なんだ?なんだ?不適切保育??虐待とは違うの?」と一種の違和感を感じました。

そこでまず違和感その1、「「不適切保育」の「不適切」って、一体なんのこと?」の出現です。

そして、それらの報道が続き、世間の関心は高まりを見せ、厚生労働省は保育現場に対して、「不適切保育」有無を報告させる一斉調査を行いました。

「フライング」スタートの全国調査

その際、いくつもの事例を報告している園もあれば、かたや全くの0で報告する園もありました。

そこで、浮き彫りになったのが、「不適切保育」の定義の曖昧さです。

現場の保育関係者は、とっくの昔から、「あれ(報道内容)って、ただの「虐待」だよね。」と、「不適切保育」=「虐待」との認識はありました。

しかしながら、厚生労働省は全国保育士会が作成した「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト〜「子どもを尊重する保育」のために〜」を参考に「不適切保育」の例として挙げていたために、以下のような項目も入りました。

いつもぎりぎりの時間にお迎えに来る保護者に「いつもぎりぎりですね」と言ったり、保護者が提出物を忘れた際に「いつも忘れて困ります」と言ったりする。

保育士会チェックリスト

上記のようなチェックリストも含まれていたために、「あると言えば、あるかも。」的な報告がされてしまったわけです。

しかし、厚生労働省が知りたかったのは、いわゆる報道に繋がるような人権を侵害する「虐待」的な保育に関する報告でした。

現場の先生は混乱してしまいます。「結局、不適切な保育って何?」と。

仕方ないですよね。報告を求めてしまったのですから。国はその定義を決めなくてはいけなくなってしまったのです。

強制定義に違和感

そのようなゴタゴタを経て、2023年5月にこども家庭庁から出された、「保育所等における虐待等の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」にて、「不適切保育」=「虐待等と疑われる事案」と、強制的に定義づけたのです。

確かにこれで、現場の保育関係者は、「あ〜、虐待じゃないけど虐待につながる一歩手前的な保育のことね。」と理解して混乱は免れそうです。

しかし、ここで、違和感その2が生じました。

「あれ?なんかおかしいな。本当にこのままでいいの?世間の言う不適切保育って、そこなの?」と。

で、その違和感の発露を辿ると、一つの答えに辿り着きました。

「不適切保育」は「不適切保育」のまま言葉として残っていい。

個人的な意見になりますが、僕は、上記枠に囲ってある保育士チェックリストにあるような保育、これも含めて、「不適切保育」とするべきだと思います。

ぎりぎりにお迎えに来た保護者に、「いつもぎりぎりですね。」なんて、どう考えても不適切じゃないですか?!

「虐待等と疑われる事案」ではないですけど、「不適切な保育」だと思うのです。

しかも、子どもに対してだけが保育ではないです。保護者対応も、何なら地域の子育て支援も含めて「保育」ですよね?

僕が言いたいことをシンプルな図にすると、下の図のイメージです。

最初は「不適切保育」って、何だか分かりにくい言葉だなと思っていました。

なぜこのような言葉が生まれたのだろう?と。

しかし、今では、「なるほど、実にしっくりくる言葉だな。」と思うようになりました。

「不適切」を語るには「適切」が分かっていないといけない

ちょっと難しい話になってきましたが、この話をまとめるためには、一つの問いに答えられなければなりません。

それは、「保育の目的は何か?」です。すなわち、「適切」とは何なのか?です。

おそらく、世間一般の人たちは、言語化できないにしても、「保育ってこうあるべきだよね」と感覚として認識しているので、それに反しているであろう事柄を「不適切」と括って表現したのだと思います。つまり、 「GOOD」と「NO GOOD」は分かっていたのです。

それでなかったら、「虐待等と疑われる事案」的な事を表現したいのであれば、とっくに「虐待」と表現して事足りていたはずです。

ガイドラインでは以下の概念図が使われています。

僕の主張としては、赤線で加筆したように、薄紫枠の中のみが「不適切な保育」ではなく、一番外の薄緑色の枠の「子どもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」が、そもそも不適切な保育に当たりませんか?という主張です。

そして、それは、「対子ども」だけでなく、「対保護者」にも言えますよね?ということが言いたいのです。

「保育の目的」は「子ども、保護者、そして保育者自身の幸せ(ウェルビーイング)」である

では、保育の目的は何なのか。

それは、紛れもなく「子ども、保護者、そして保育者自身の幸せ(ウェルビーイング)」です。これが答えです。

子ども、保護者、保育者の幸せ(ウェルビーイング)に相反する保育は、全て「不適切保育」と言えるのです。

そのため、「不適切保育」の定義を「虐待を疑う事案」とだけに限定してしまうことに対して、ものすごい違和感を感じました。

そして、「適切保育」とは何か?

それが、「ウェルビーイング保育®︎」です。

ウェルビーイング保育®︎とは?

JWECA(一般社団法人日本ウェルビーイング教育・保育協会)では、「ウェルビーイング保育®︎」について、「子ども・保護者・保育者のウェルビーイング(幸せ・健康)を基盤として子どもの学びや成長を支える保育およびその保育を実現するための価値ある教育・福祉・文化・社会の創造を目的とした活動」を指し、「不適切保育」の対義語として、定義しています。

ウェルビーイング無き保育はただの「作業」です。「保育」とは言えません。

食べさせればいい。

遊ばせていればいい。

寝かしてればいい。

これ全て「作業」です。保育をしているようで保育ではありません。「作業」であり、「不適切保育」です。家畜を飼っているわけではないのです。(否、家畜でさえも愛情を掛けていると思います。)

そのような愛情無き保育に、世間や保護者は違和感を持ち、「不適切保育」という言葉を編み出したのでしょう。実に的確な表現といえます。

もっとストレートな表現をすると、「不幸保育」と言えます。それは、絶対に避けなければなりません。

まとめ

今回は、「「不適切保育」が「虐待等と疑われる事案」との名称変更されることへの違和感」について話をさせていただきました。

次に、語るべき内容は、「では、何をもってウェルビーイング(幸せ)というのか?」ということになると思います。

そこで、当協会では、子ども・保育者・保護者のウェルビーイング(幸せ)に関する「ウェルビーイング保育®︎」について解説した講座を用意しており、学びの証として、「ウェルビーイング保育®️実践ファシリテーター」の資格認定も行なっております。
ご興味がありましたら、ぜひご受講頂けたらと思います。


今回のコラムはこれで以上となります。

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それではまた、次回のコラムでお会いしましょう!

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