ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的によい状態であることを指します。幸せや幸福と訳されることもありますが、もっと広い概念です。ウェルビーイングは、自分自身や周囲の環境に適応し続ける能力を含んでいます。

では、保育(幼児教育)に携わる人が、ウェルビーイングを学ぶべき理由は何でしょうか?

ここでは、3つの理由を紹介します。

1.子どものウェルビーイングを高めるため

子どものウェルビーイングは、その成長や発達に大きな影響を与えます。子どもがウェルビーイングを感じると、自信や自己効力感が高まり、好奇心や探究心が育ちます。
また、感情や思考を適切に表現し、他者と協力し、社会的な関係を築く能力が向上します。これらの能力は、子どもが将来的に社会に参加し、自分の夢や目標を実現するために必要なものです。

一方、子どもがウェルビーイングを感じないと、心身の不調やストレスが生じやすくなります。子どもは不安や恐怖、怒りや悲しみなどのネガティブな感情に囚われ、自分の価値や能力を低く見積もります。
また、学習や遊びに対する興味や意欲が減退し、集中力や記憶力が低下します。さらに、他者とのコミュニケーションや協調性が欠け、孤立やいじめなどの問題が発生する可能性が高まります。
これらの問題は、子どもの人格形成や社会適応に悪影響を及ぼします。

以上のことから、保育(幼児教育)に携わる人は、「子どものウェルビーイング向上のため」に、「ウェルビーイング」を学ぶべきだと言えます。
子どものウェルビーイングを高めるためには、子どもの感情やニーズに寄り添い、安全で快適で刺激的な環境を提供し、子どもの自主性や創造性を尊重し、子ども同士や大人との良好な関係を促進することが必要です。
これらのことを実践するためには、「ウェルビーイング」の概念や要素、評価方法などを理解し、自分自身のウェルビーイングにも配慮しながら、子どもに適した支援策を考えていくことが求められます。

また、子どものウェルビーイングは、子どもの基本的な人権であり、国内法や国際条約でも保障されています。子どものウェルビーイングを高めることは、平和で民主的な国家や社会を形成することにもつながります。

2020年に公表されたユニセフ・イノチェンティ研究所の報告書「子どもたちに影響する世界」では、日本の子どもの幸福度は先進38か国中20位であり、さらに精神的幸福度については38か国中37位とほぼ最下位でした。
この結果は、日本の子どもたちのウェルビーイングが低いことを示しており、深刻な問題です。
新型コロナの影響で、子どもたちの生活や学びが制限されたり、不登校や長期欠席が増えたりする中で、さらに悪化する恐れがあります。

このような状況を見ると、保育(幼児教育)に携わる人は、「子どものウェルビーイング」を学ぶべきであることは、当然のことと言えます。
子どもたちが長い時間を過ごす保育園や幼稚園は、子どものウェルビーイングに大きく関わっているからです。
保育士や幼稚園教諭は、子どもたちの異変や問題に気づきやすく、適切なケアや支援を行うことができます。また、保育(幼児教育)の内容や方法を工夫することで、子どもたちの自己肯定感や社会性などを育てることができます。

以上から、「子どものウェルビーイング」を学ぶことは、保育(幼児教育)に携わる人にとって有益であり、責任でもあると言えるでしょう。

2.保育者自身のウェルビーイングを高めるため

ウェルビーイングとは、心身ともに健康で幸せである状態を指します。保育(幼児教育)に携わる人は、子どもたちのウェルビーイングを支える重要な役割を担っていますが、同時に自分自身のウェルビーイングも大切にする必要があります。なぜなら、保育者自身のウェルビーイングが低下すると、保育の質や子どもたちの発達に悪影響を及ぼすだけでなく、保育士の離職問題や保育士不足の問題を深刻化させるからです。

保育者は、子どもたちの成長を見守り、安全で楽しく学べる環境を提供するというやりがいのある仕事ですが、同時に責任やプレッシャーも大きい仕事です。
保育者は、子どもたちのお世話や保護者との対応だけでなく、清掃や衛生管理、指導案や記録などの事務作業も行わなければなりません。また、人手不足や給与水準の低さ、人間関係のトラブルなどもストレスの原因となります。
こうした状況によって、保育者は心身ともに疲弊し、自分自身のウェルビーイングを失ってしまうことがあります。

自分自身のウェルビーイングが低下すると、保育者は仕事に対するモチベーションや満足感を感じられなくなります。
また、心身の不調や病気によって休職や退職を余儀なくされることもあります。
これらは、保育者の離職率を高める要因となります。厚生労働省の資料 によれば、保育士全体の離職率は9.3%であり、経験年数6年未満の保育士さんが全体の約6割を占めています。これは、経験を重ねる前に辞めてしまう方が多いことを示しています。

保育者の離職率が高いことは、施設や園児・保護者にとっても大きな問題です。

具体的には、以下のような影響が考えられます。

  • 保育士の不足により、保育所の定員が減らされたり、開園時間が短縮されたりすることがあります。これは、働く親の就労支援や子どもの発達に悪影響を及ぼします。
  • 保育士の入れ替わりが激しいと、園児や保護者との信頼関係が築きにくくなります。また、保育士同士の連携やチームワークも低下する可能性があります。
  • 保育士の離職率が高いと、残った保育士に過重な負担がかかります。これは、保育士のストレスや疲労を増やし、さらなる離職の原因になる恐れがあります。

以上のように、保育士の離職率が高いことは、保育所や園児・保護者だけでなく、保育士自身にもマイナスの影響を与えます。この問題を解決するためには、保育士の待遇改善や職場環境の改善など、さまざまな対策が必要であり、そのためのウェルビーイングの学びなのです。

3.保護者や社会からの信頼を取り戻すため

保育所の園児虐待(不適切保育)問題は、保育業界に大きな衝撃を与えました。
保育所の園児虐待(不適切保育)とは、保育所で働く職員が、園児に対して暴力や暴言、無視などのネガティブな行為を行うことです。
このような行為は、園児のウェルビーイングを著しく低下させるだけでなく、保育士や幼稚園教諭という資格があれば、子どもたちの安全や幸せを守れると信じていた親たちや社会からの信頼が失われました。
この問題は、単に個人のモラルや能力の問題ではなく、保育制度や環境の問題でもあります。
保育者は過重な負担やストレスにさらされており、適切な研修や支援が不足しています。
また、保育者の待遇や地位も低く、離職率が高いのが現状です。このような状況では、本当に我が子を愛してくれる保育者を見つけるのは難しいかもしれません。


しかし、保育所や幼稚園での園児虐待は極めて例外的な事例であり、多くの保育者は子どもたちに寄り添い、尊重し、愛情を注いでいます。
親たちは、保育者とのコミュニケーションを大切にし、互いに信頼し合える関係を築くことが必要です。また、社会全体で保育者の働きや役割を評価し、支援することも重要です。
園児虐待・不適切保育による信用低下問題は、私たちに保育の本質や課題を考え直させる機会でもありました。

園児虐待・不適切保育の原因としては、職員のストレスや疲労、不適切な指導方法や人間関係などが考えられます。
これらの問題を解決するためには、幼児教育や保育に携わる人が、「ウェルビーイング」を学ぶことが必要です

「ウェルビーイング」を学ぶことで、職員は自分自身の心身の健康や幸福感を高めることができます。
また、「ウェルビーイング」を学ぶことで、職員は子どもたちに対する理解や共感力を深めることができます。
さらに、「ウェルビーイング」を学ぶことで、職員は子どもたちに対してポジティブな感情や態度を示すことができます。
これらのことは、園児のウェルビーイングを高めるだけでなく、保護者や社会の信頼も回復することにつながります。

当協会のコミュニティは、人の「善き心」すなわち「ウェルビーイング精神」のもとに成り立っています。
当協会でメンバーの皆さんと交流をしていく中で、他の人の「善き心」に触れ、あなたも心も磨かれていくことでしょう。
「イライラしている時、私もつい不適切保育してしまうかもしれない・・・。」と不安になる方は、ぜひ積極的にウェルビーイングを学び、コミュニティの中で心を磨いていきましょう。

まとめ

ということで、保育(幼児教育)に携わる人がウェルビーイングを学ぶべき3つの理由をお伝えしました。

ウェルビーイングは自分自身の心身の健康だけでなく、子どもたちの成長や発達にも大きな影響を与えます。ウェルビーイングを高めるためには、自分の感情や価値観を理解し、ストレスや困難に対処する力を身につけることが必要です。
また、周囲の人との良好な関係や支え合いも重要です。
保育(幼児教育)はやりがいのある仕事ですが、同時に責任やプレッシャーも大きい仕事です。そのため、自分のウェルビーイングに気を配ることは、自分のためだけでなく、子どもたちのためにもなります。

2023年3月、文部科学省中央教育審議会は、「次期教育振興基本計画について(答申)」を取りまとめました。
その基本計画のコンセプトは、「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」の2つです。
保育(幼児教育)の分野でも、「ウェルビーイング」が主軸となってきました。今こそ、全保育者が「ウェルビーイング」を学び、実践する時と言えます。

ウェルビーイングを学ぶことで、貴方自身が、より充実した仕事と人生を送ることができます。
ぜひ、一人でも多くの保育者や子育て家庭の保護者の方々に、当協会のメンバーとなっていただき、一緒に笑顔あふれる社会を創造していきたいと思っております。

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