ウェルビーイング(well-being)とは、「幸福」「健康」という意味に加え、身体だけでなく、精神的、社会的にも満たされている広い意味の幸福を指す概念を言います。

世界保健機関(WHO)憲章では、健康とは何かを説明する前文にウェルビーイングという言葉が使われています。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(ウェルビーイング: well-being)をいいます」
(引用:公益社団法人日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」)

日本でも厚生労働省でウェルビーイングを次のように定義しています。

「ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。(引用:厚生労働省「雇用政策研究会報告書概要(案)」)

WHOと日本、それぞれ表現が異なるものの、いずれもウェルビーイングの概念である「身体的、精神的、社会的に満たされた状態にあること」と説明しています。

では、ウェルビーイングとは具体的にどのような幸福を指すのでしょうか?またどのような状態を幸福と呼んでいるのでしょうか?

幸福(ウェルビーイング)について、有名な研究成果を残している2人の理論を紹介します。

■①アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが提唱する5つの要素

■②慶応義塾大学 前野教授による幸福学「幸せの4因子」

①ポジティブ心理学の父・マーティン・セリングマン教授の「PERMA」

ポジティブ心理学の提唱者であるマーティン・セリグマン教授は、 アメリカの心理学者で、ペンシルベニア大学教授であり、ポジティブ心理学センター長でもあります。

セリングマンは、アメリカ心理学会会長だった1998年に、 今後取り組むべき課題としてポジティブ心理学の概念を打ち出し、ポジティブ心理学を始めた人で「ポジティブ心理学の父」と呼ばれています。

セリングマンは、従来の臨床心理学が「うつ」などに代表される病気や悩みなど、人のネガティブな心理状態にフォーカスしていたのに対して、ポジティブ心理学は通常通りの生活をさらに生き生きとした良い状態にすることを目指しています。

セリングマンは著書「ポジティブ心理学の挑戦」(2014)で、 幸せ(ウェルビーイング)のための5つの条件として「PERMA」という指標を示しました。

PERMA」とは、ウェルビーイングを高めるための5つの要素を指す言葉です。「PERMA」は、以下の頭文字をとったものです。

P:ポジティブな感情(Positive Emotion)
E:エンゲージメント(Engagement)
R:人間関係(Relationships)
M:意味・意義(Meaning)
A:達成(Achievement)

これらの要素は、人々が幸せで充実した人生を送るために必要なものとして、セリグマン博士によって提唱されました 。それぞれの要素について、簡単に説明します。

P:ポジティブな感情(Positive Emotion)

ポジティブな感情とは、希望や喜び、愛や感謝など、心を明るくする感情のことです。

ポジティブな感情は、幸福度の主要な指標であり、考え方や行動を前向きにする効果があります。

E:エンゲージメント(Engagement)

エンゲージメントとは、自分の強みや興味を活かして、何かに没頭することです。

エンゲージメントは、「フロー」とも呼ばれ、時間や自我を忘れるほど集中する心理状態を指します。

R:人間関係(Relationships)

人間関係とは、パートナーや友人、家族や同僚など、他者との良好な関係のことです。

人間関係は、他者からサポートや愛や評価を受けることで、幸福度を高める効果があります。

M:意味・意義(Meaning)

意味・意義とは、自分自身よりも大きなものに所属し、奉仕することです。

意味・意義は、人生に目的や価値を与えるものであり、困難や逆境に立ち向かう力を高める効果があります。

A:達成(Achievement)

達成とは、自分が目標とすることを実現することです。

達成は、自信や満足感を生み出すものであり、さらなる挑戦や成長につながる効果があります。

以上の「PERMA」理論に基づいて、自分のウェルビーイングを測定したり、向上させたりする方法が研究されています。

「PERMA」理論を教育・保育の分野にも取り入れることで、より幸せなコンディションになるかもしれませんので、是非、覚えておいてください。

②日本人のためのポジティブ心理学「幸せの4つの因子」

幸福学研究で有名な前野隆司教授(慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)は、幸せに影響する要因についてのアンケート結果を因子分析し、「幸せの4因子」を導き出しました。

まず、「幸せの4因子」とはどのようなものかと言いますと、以下の4つの因子のことを言います。

● 第一因子 「やってみよう!」因子 (自己実現と成長の因子)
● 第二因子 「ありがとう! 」因子 (つながりと感謝の因子)
● 第三因子 「なんとかなる!」因子 (前向きと楽観の因子)
● 第四因子 「ありのままに!」因子 (独立とあなたらしさの因子)

「やってみよう!」因子 (自己実現と成長の因子)

「やってみよう!」因子は、自分の夢や目標に向かって主体的に努力を続けることで、幸せを感じる因子です。

自分が好きなことやワクワクすることに挑戦することで、自己成長や達成感を得られます 。

「ありがとう! 」因子 (つながりと感謝の因子)

「ありがとう!」因子は、周りの人とのつながりを大切にし、感謝の気持ちを伝えることで、幸せを感じる因子です。

多様な人との関係や、他人のために貢献する気持ちが強い人ほど、幸福度が高まります 。

感謝することで、自分と他人を比べない姿勢も身につきます。

「なんとかなる!」因子 (前向きと楽観の因子)

「なんとかなる!」因子は、ポジティブに考えることで、幸せを感じる因子です。

どんな状況でも「なんとかなる!」と信じることで、不安や恐れを乗り越えられます 。

ポジティブな思考は自己効力感や自信を高める効果もあります。

「ありのままに!」因子 (独立とあなたらしさの因子)

「ありのままに!」因子は、自分らしさを大切にすることで、幸せを感じる因子です。

自分の好きなことや得意なこと、価値観や感性を見つけて磨くことで、自己肯定感や満足感が高まります 。

「ありのままに!」と思うことで、自分に集中し、本当の幸せを探せます。

アメリカの心理学の研究結果に「幸せな社員は、不幸せな社員よりも創造性が3倍になり、生産性は31%高い」というものがあります。
幸福度が高い社員は、そうでない社員よりも欠勤率が41%、離職率が59%も低く、業務上の事故が70%少ないという研究結果もあります。

「幸せの4因子」を満たした教育・保育であれば、子どもたちにとっても、保育者にとっても、素晴らしい保育ですよね!
日頃、「幸せな保育」を意識するための指標として、覚えておきましょう!


当協会認定資格の「ウェルビーイング保育®️実践ファシリテーター」養成講座では、上記に挙げた「PERMA」理論や「幸せの4因子」の他、レジリエンスやセルフエスティーム(自己肯定感)などの心理学と、幼児教育・保育の関連についても講義しています。

一人でも多くの保育者や子育て家庭の保護者の方々に、当協会のメンバーとなっていただき、一緒に笑顔あふれる社会を創造していきたいと思っております。ご興味のある方は、ぜひご受講ください。

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